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最愛 【黒子のバスケ】

第16章 愛しい体温


みさきの白く華奢な太ももにメスが入れられ切開されていく


みさきは、あの事から立ち直る過程で身体的なトレーニングを重ね、身長が低いコンプレックスをカバーするために履いていたヒールをより綺麗に履きこなすため努力をしていた


華奢なみさきの脚についた筋肉はみさきの努力の賜物だったが、それを切開しなければいけないということはとてつもない罪悪感だった。

しかも、刺された傷のところに沿って切開しても傷を大きくしてしまうことに変わりはない。






執刀医が慎重に切開を進めガーゼオーマの全体像が見えた。



大きさは想定していた通り
だが、癒着は想定を遥かに超えた複雑さだった。


『かなり厄介な事になっているな。輸血準備を』


執刀医の言葉に、みさきが懸命に体重を増やして貯血した1200mlの血液が用意された。

動脈に遠いところから少しずつ慎重に、神経と組織を肉芽腫から切り離しながら徐々に動脈部分に近づいていく。

助手についた俺も何度も汗をぬぐってもらいながら0.1mm単位で剥離を続けた。


モノポーラを当てる度に煙が上がる




手術開始から3時間、動脈部以外の剥離は終わった。

現時点で出血量や血圧に問題はない。


だが、ここからが俺たちにとってもみさきにとっても正念場になる。


手術室の扉が閉まる直前に見た青峰の表情……
あいつがあんなすがるような目をするところは初めて見た。

どんな時でも自分の力で乗り切ってきたあいつが、今は俺たちに託すしかないと悟っている目だった。

何としても死なせるわけにはいかない
辛い思いをしてきたみさきが、やっと幸せになれる相手を見つけたんだ

俺はみさきを青峰のところに戻らせる義務がある


剥離の済んだ部分だけを一度切り離し血管に癒着した部分の剥離にかかった。



執刀医が慎重に少しずつ剥離していくが、複雑に血管に絡みついている為に、肉芽腫の深さが正確に捉えられない。



『浅めから徐々にだ。吸引を』

執刀医の指示で剥離から吸引に回り、万が一出血があれば出血点をすぐに発見できるように移動した。

俺のやった剥離よりはるかに慎重に、少しずつ血管から肉芽腫が剥離されていく









血管への癒着部を1/4程剥離したところで、じわじわと湧き出るように出血が増えて、吸引機が明らかに大量の血液を吸い始めた
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