第12章 歳の瀬
グツグツと沸騰したお湯。
それに今朝仕込んでおいた素を入れる。
かき混ぜるとふんわりと漂う独特の香りに思わず口が綻ぶ。
相「新年早々やけ酒か?」
『残念ながらアルコールは入っていません。』
いつから居たのか。
真横に立つのは全身真っ黒な我が担任。
『正月くらいおめでたい格好しないんですか?』
相「めでたいのはマイクだけで充分だろ。」
『……………確かに。』
出来立てのそれを手湯呑みに注いで渡せば、待ってましたと言わんばかりに口を付ける。
相「甘酒か……。温かいものが身体に染み渡るな。」
『急に歳の差を感じる。』
相「実際差はあるんだ。仕方ないだろ。」
そう言って先生はまるで全てを諦めたような目で遠くを見つめた。
熱かった甘酒はあっという間に冷えていく。
『歳の差があったって関係ないでしょう。大事なのは当人です。』
一瞬目を見開いた先生は残っていた甘酒を一気に飲み干すとそうだな、と言った。
相「美味かったよ。ご馳走さん。」
私の頭を軽く撫でて自室に戻るであろう先生の背中は心なしか上機嫌に見えた。
END