第2章 あなたをください
しばらくして、エミリアが首筋から離れた。
エルヴィンは漸く現れた唇にキスをすると、口内に血の独特な匂いと味が広がっていった。
「エルヴィン様」
「ん?」
「・・・ありがとうございます」
「ああ、上手くいくといいな」
「・・・はい」
照れ臭そうに腹を撫でるエミリア。その小さな手に自分の手を重ねた。
彼女が妊娠した暁にはこの古びた忌まわしい記憶のある鳥籠の中から出して、自分の手元に置いておこう。精一杯の幸せを彼女と自分達の子供に与えよう。愛の言葉を伝えるのはその時にしよう。今まで言わずにきた分以上に。
オーベル家を縛る血の呪いの解明はまだ先になりそうだが、きっと呪いを解いてみせる。
まだ実ってもいない命の宿り場所に手を置き、エルヴィンとエミリアは小さなベッドの上で眠りについた。
-第6章 あなたをください END-