第16章 君が知らないこと
お前、なんで生まれたの
母さんの青春奪いやがって
どこへでも行け
親から言い放たれるこの言葉は、もうずっと小さい頃から言われ続けている。
私は周りの同級生に較べて感情の起伏が無いのはこの言葉から自分の精神面を守る為、つまりは自己防衛の為なのだと気が付いたのは最近だった。
今年の春から高校生になる同級生達。私はその花が咲くような暖かい人間達からそっと遠ざかった。
同級生達は高校生、私は今年から社会人。
親に高校の話をしたが「んな金ねぇよ。身体売れば?」とか言われて相手にもされなかった。だから、卒業を待って身体を売ることにした。
そんな思いにふけながら、私が持つ唯一の私服である黒のパーカーと、スキニーパンツに裸足でスニーカーを履いて外を歩いている。
万引きした服だ。それがさっき親にバレてボコボコにされた。
いよいよ死を感じて、家を飛び出した。
拳を受けた顔や頭、蹴りが入ったみぞおち、何度も蹴られた脇腹。家を飛び出す直前、後頭部にテレビのリモコンが当たった場所が脈に合わせて酷く痛む。
公園の遊具に体を預けて、そのままズルズルと地面に座った。親から拝借したタバコに火をつけてふかし、白い煙を吐いた。タバコを吸わなくてもまだ充分寒い気温に、自然と息が白んでいる。
「クソ……死ねばいいのに……」
無力な自分に腹が立った。
早く、早く……死んでしまいたい。