第15章 消失
身体が戸惑いで動かない。舌が唇を舐めた時、漸くエルヴィンを突き飛ばした。
「っ何してるの!?エルヴィン……!!」
黙ったままのエルヴィンはすぐに私に向かってきてまたキスをしてきた。拒むが強い力で離れない。ベッドに押し倒される。
顔を背けてエルヴィンの名前を呼ぶ。
「何、母さん。嫌なのか?」
「嫌よ……!あなたは息子なの……!」
「そうだ、まだ誰を愛してるか教えてなかったな」
グッとエルヴィンの胸を押すがダメで、耳元にエルヴィンが近付いてくる。唇の当たる距離でエルヴィンは言った。
「俺が愛してるのは昔から母さん、いや……ユリアだけなんだよ」
耳が食まれる。
そんな。嘘。今まで甘やかした代償?マザコンというレベルじゃない。近親相姦だ。
ぴちゃ、と音を立てる愛撫にゾワゾワとして、エルヴィンの頬を叩いた。初めてだった。聞き分けの良かったエルヴィン。なんで。どうして。こんな事有り得ない。
私とあなたは親子でしょ……?
叩かれた頬を撫でるエルヴィンの隙をついてベッドから逃げ、スマートフォンに駆け寄るが直ぐに背中に重たいものがのし掛った。
肺が潰され、「うっ」と声が出る。
「ユリア」
低い声。知らない。誰。
「“母さん”はいつも俺を受け入れてくれただろう。何故今更逃げるんだ?酷いな」
「や、助けて、止めて、誰……!エルヴィンじゃない、こんな子じゃ……」
「ああ、そうだよ。いつも見ていた俺は良い子だった。だが頭の中はユリアとぐちゃぐちゃになるまでセックスして、嫌がって泣いたって離してやらず、一晩中犯す事ばかり考えてる。この数年、よく我慢したよ俺は……他の男と結婚して、身体を許して……俺が産まれたのはその罰なんだよ」
よく分からない。何言ってるの?
今までのエルヴィンは……本当のエルヴィンでしょ?