第5章 朝の喧騒
「もうちょっとくらい、楽しめるかと思ったが、残念だな」
瑠璃を盾にしている男意外は瞬く間地に墜ち、地面に血溜りが出来た。
残党と言うにも足りない。
「こ、こ、この女が、
どうなっても良いのか‼︎」
震える声を振り絞って、脅すも、
「良いぜ。
そいつは、俺の女でも何でもねぇ。
邪魔なら、一緒に斬るまでよ」
政宗は眉一つ動かさない。
「ま、でも、お前だけ殺してやるから、
心配すんな」
ニカッと笑うと同時に政宗の刀がヒュッと音を立てた。
そして、刀を持った男の肘から下の腕が
ボトリ…と地に落ちた。
「お前らの様な雑魚が束になったって、
俺の首は取れねぇ。
盛胤の下へ逝け」
抱えていた腕が無くなって、まだ意識の戻らない瑠璃が、地面に崩れ落ちる……
刹那、政宗が左腕で抱き止めつつ
不安定な姿勢にもかかわらず
政宗の刀が幾分の狂いも無く男の喉を掻っ切った。
反撃も出来ないままに、男は息絶えて逝った。
「同胞を幾らも集めないまま、怒りに任せて追ってくるとは、大概に馬鹿野郎だな。
命を粗末にしやがって……」
瑠璃の口と、両手足を縛っている物を切ると、政宗は刀を鞘に戻した。
「もう、終わったのか」
光秀の呑気な声が近くで聞こえた。
「そっちはどうだ?」
「ざっと、12.3人か。
死なない程度にしておいた」
とこちらも楽しげに笑う。
「瑠璃が目を覚まさない内に、
ここから離れるぞ」
馬上の光秀に瑠璃を渡すと、政宗も馬に
跨り、来た道を戻った。