第30章 花顔涙咲
瑠璃は更に秀吉にワザと恩を売っているが、
「疑いたくて疑うのではなく、信じる為に疑わなくてはならない。秀吉様のお気持ち、お察し致します」
※清淡(せいたん)とした瑠璃の姿に
秀吉の心が懐柔される。
(女を武器に、その賢さで近寄って来ると思ってたが…)
拝賀当日に、身分は疑いのない者だと判明していた。
にもかかわらず疑いが消えなかったのは、
美貌に秀麗で、いかにも女らしいのに、
女らしからぬ冷めた態度で、笑顔の奥に
何かを隠伏しているように思えた。
今までに出会ったどの女より、※秀英得色として見えたからだ。
(余りに勘ぐり過ぎたか…)
反省する。
秀吉 瑠璃の策に嵌る の図だ。
もう一度瑠璃を見れば、悠容として目を細められた。
「!」
秀吉の顔に朱が差す。
瑠璃が秀吉を※柔克(じゅうこく)した時だった。
※清淡…心が静かで無欲でサッパリしている
※秀英得色…優れていて得意げな顔つき。
※柔克…力を使わず勝つ、手懐ける。