第17章 新年拝賀5(宴の刻)
城を出て、日の沈みかけた道を御殿まで並んで歩く。
「良かったんですか。先に帰って」
瑠璃が政宗に問う。
「問題ない。俺は飲めないから、いつも最後までいない。
それに、お前は疲れてるだろう」
「宴は楽しかったですけど、気疲れしたかも」
呟く瑠璃。
謁見での緊張感と圧迫感は、今迄で最大だった。
一言を紡ぐのに心底震えた。
今は引いていない打掛けの重みがまだ肩に残っているようだった。
肩には打掛けでは無く、月白色のケープ。
「でも、…信長様が伝わっているより、ずっと優しい方で安心しました」
「伝わって……あぁ、お前の時代でな。
信長様はどんな風に言われてるんだ」
興味津々
「合理主義的で残忍残虐、魔王のようだったと」
「へぇー、まあ、間違いだは無いだろうが……」
「でも、表面だけ見て、内面を見ないで、そう伝わっているって悲しいです。
あんなに人をよく見て、内まで考えて下さる方なのに…」
瑠璃は寂しそうな顔をする。
「そうだな……」
(従えられないなら、か…俺が瑠璃を解ってやれないと思ってらっしゃるのか?)
信長の言葉を反芻し拳を握り締める。
拝賀の後、瑠璃が欲していた言葉をすぐにかけてやれず、悲しませた。
琴を掻き鳴らし泣いたのだろう、宴に現れた瑠璃の目は赤かった。
琴を送ったのも、作り笑の瑠璃から本当の笑顔を引き出したのも、光秀だった。
思い出すと、自分にも光秀にも苛立った。