第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
信長は政宗に声を掛ける。
「政宗、あの刀、俺に預けぬか」
その言葉に政宗は即座に君主信長を睨みつける。
「恐れながら、それは出来ません。
あれは俺を救い、俺が拾ったモノですから」
「…そうか、残念だな。
だが、もし、あの刀を使いこなせぬなら、
いつでも持って来るがよい」
信長は片笑みを浮かべて政宗をみる。
「その日はきません」
政宗も笑って見せた。
(刀な……鋭く冷たく輝いていても、
思うより脆く、熱に弱い。
常に手入れをしなければ直ぐに錆びつくが、
大切にすれば魂が宿り自分の一部のようになる。
瑠璃が刀の様だとは信長様もよく言ったものだ)
光秀は独り感心しながら政宗を揶揄っている信長を見た。
たわいもない話を始めた一同だったが、胸中
瑠璃の事を各々(おのおの)、考えていた。
(才貌は素晴らしいです。宴ではもっと色々お話をしたいですね〜)
(寒夜の冴えた月も惑わし欺いてしまう、美鬼だ)
(公家…狐じゃないのか?羊の皮を被った
狐だったらただじゃおかない)