第59章 女神再臨
「…何とか言って……声を聞かせてくれ…」
こんなにも、体温を感じ、
身体を震わせて泣いていて、柔らかく抱いて、全てで感じられる感触があるのに、
ちゃんと声を聴いていない 今、まだ、
俄かには信じられなくて……
夢じゃないかと疑う。
(この耳に、お前の声を届けてくれ)
瑠璃が泣きならがらも顔を上げて、
俺を見つめて、眉を寄せ微かに笑顔を浮かべる。
けれど、涙だけが流れて声にならない。
「泣いてもいいから、俺を呼べ……呼んでくれ、頼む」
声が聞きたい。
凛と澄んでいながら、柔らかく優しい声で。
時には 空気を震わすだけの様に、
俺を呼んだ、その声で。
「ここに、居るって、実感させてくれ…」
もう一度、胸の中に抱き締めると、
俺の背中に回った腕も抱きしめ返してくる。