第54章 それぞれの流光
廓を出た所で声をかけられた。
「政宗、ここ1番の遊女はどうだった」
イヤな奴が待っていた。
「光秀」
いつもの様な嫌味な笑みを唇にのせ、
心の奥を見透かすような視線を向けて来る。
「俺なんか待って、暇なヤツだな」
「で、どうだった」
「…どうもこうも…指一本 触れなかったさ」
「ほぉ、それはそれは……
どんな男も虜にするほどの美と智と技を持っていると聞いていたが。
そんな女を抱くどころか、触れもしなかったとは。
禅道にでも入るのか?」
クククッ…
さも馬鹿にしたように、愉快そうに喉を鳴らして笑う光秀。
「なんとでも言え」
2人、並んで歩く。