第54章 それぞれの流光
多少 幼顔だが、切れ長の目、高過ぎない鼻梁、整った顔立ちをしている。
(名は確か…鶴若、だったか?)
若くて鶴のような美しさ、とつけられた廓名だ。
男を誘う化粧を施し、紅を引いて笑えば、
普通の男なら、相当入れ込んでしまうだろう魅力的な女だった。
そんな一般的、世間で言う、イイ女が、
着物を脱ぎ薄い腰巻き1枚で、褥に立肘枕で横臥している。
据え膳状態。
(本当に久しぶりに来てみたが……)
「兄さん、ワテと遊びに来はったんやないの?」
「……」
「酒も飲まへん、煙草も喰まん。お金払ぉて
お喋りしに来たん?」
上半身裸の女が、細い腕を伸ばし、
政宗の膝へとすり寄って来る。
「抱いてくれへんの?」
濃艶な笑みで女は見上げる。
これで手を出さない男がいたら、その男は男でないか、その男の忍耐や精神に敬伏する。
今、
その状況で、政宗は
「……」
尚も黙って女を見ていた。