第53章 君想ひ影探す
母の言葉が邪魔をした。
手を伸ばしたくても怖くて伸ばせなかった。
伸ばした手が振り払われるかもしれない恐怖。
心を開ききらない私に何度もアプローチしてくれた。
そして、
『どんな私も愛してやる』という言葉を、
ようやく、受け入れられた。
真っ直ぐに接してくれたから。
『愛してる』
私に初めてその言葉をくれた人。
母にも父にも言われたことがなかった、
その一言。
『泣いても弱くても恥ずかしいことじゃない』
私の弱さを認め許容してくれた人。
泣いてもいいんだと言ってくれた人。
本当の私を見せられ、
本当の私を知っている、
ただ ひとりの人。