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《R18》知らないんでしょ《庭球》

第6章 距離感



 遥の誕生日に喧嘩して、直ぐに仲直りしたあの日から変わった事が二つほどある。
 一つ目は遥の人当たりが良くなった事。以前までの遥は女子に影で「愛想が悪い」と言われる程の人間であった。と言っても、遥が言うに「楽しければ笑うし、つまらなければ無表情になる」との事。決して遥自身愛想を悪くしている訳ではなく、素の彼女なのだ。
 しかしそれが今ではどうだ?自分から話しかけにはいかないものの、話しかけられれら男女問わずきちんと言葉を交わし愛想良く笑うし、話題に応じて表情がコロコロと変わる。

『なぁ、最近楠さんめっちゃお愛想良くて可愛ない?』
『わかる!あ、聞いて!?楠さんこないだ「前髪切った?良いね」って言ってくれてん!』
『え、前髪切ってたん?気付かへんかったわ、ごめん』
『ええの!ほんまにちょこーっと切っただけやから誰も気付かへんて思ってたし。せやけど気付いてくれたらびっくりして、あとなんか嬉し恥ずかし…?照れる?ちゅうか…自分でも分からへんけどむず痒い感覚になったわ〜』

 自席で頬杖をつきぼーっと過ごしていたら、そんな会話が耳に滑り込んできた。以前の遥の噂話とはまるで違う。いい方向へと向かっている遥の評判に、名前は内心で安堵の息を吐いた。
 それにしても…と、名前は眉を寄せる。自分は遥にとって、そんなにも重要な人物だとは思わなかった。単なる嫌がらせだと思っていた行動の数々の行動だがーー…。

『アンタが居ればそれでいい』

 泣きながらそう訴えてきた遥を思い出し、何故か心臓がキュウ…と痛んだ。なんとも言えない感覚に、そっと目を閉じまた息を吐くと「苗字さん」と甘い穏やかな声が耳に滑り込んできた。
 ドキリと心臓が跳ね上がる。ぱっと反射的に目を開き、声のした方へと視線を向けると白石が傍らまで寄ってきた。同じクラスの筈なのに、久しぶりに白石を見たような感覚に名前は陥った。しぱしぱと瞬きをした後、我に返り慌てて口を開く。

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