第2章 [く] クロ猫と傘と恋....R18
あの雨の日
軽率に招き入れてしまった事を
「茉莉さん、ただいま~」
そう言って開かれるドアに
浮かれる度に後悔する
『また、お父さんと喧嘩したの?
お腹は?空いてない?』
「…うるさいですぅ
腹は減ってマス」
甘えた声にドキドキする心臓を
確認する度に泣きそうになる
『先にお風呂入ったら?
部活してきたんでしょ』
「相変わらず用意周到
オトナですね~」
『クロくんよりはね』
なんでもないフリする度に
嘘つきな自分に嫌気がさすのに
それでも
ドアが開くのを待つ私は
自分でも重たくて
身軽に来ては出て行く
クロくんに心を悟られない様にするのが
精一杯だった
ご飯を食べて少し話して
「茉莉さん、眠ぃ…」
クロくんとベットの上へ
何にもない
ただ眠るだけ
その先は望んじゃいけない
そう思って大きな彼の手や身体を温めてた
”いつか”を密かに願ってる事を
必死に隠しながら
私はクロくんを待ってた
まさか私だけが求められてないなんて
思うわけもなく。
その日も雨で
少し肌寒くて
温かいものが食べたくなる様な
そんな日だった
スーパーで独り暮らしにしては
少し多めの食材をカゴに入れる
今日は来るかな、とか
一人唇を綻ばせながら。
スーパーを出て帰る途中
買い忘れた牛乳の存在を思い出して
仕方なく通り道にあるコンビニへ
この時スーパーまで戻ってたら
夢から覚めないままで居られたのに
狭いコンビニの中
イヤでも目立つ高い背に髪型
ひと目で分かる広い背中
『クロくん!』
「え?茉莉…さん?」
運命、なんて夢見た私の目には
「あ、これは…」
現実が次々と映りこむ
クロくんの手にはゴムの箱
そして側には
「クロ~?まだ?選ぶの長過ぎ~
どれでも気持ちいいじゃん?
早く帰ってエッチしよ?」
甘い声と綺麗な子
『あ…の…えっと…彼女?』
動揺を隠せずに上擦る声に
「まさか!クロはそんな面倒なもの
作らないって、ねぇ?
てゆっか、お姉さんも
クロの寝床のひとつでしょ?
ごめんね?今日は私が先約なの。
また今度にして?」
悪気のなさそうな明るい声が応える
どういう事?
他にも居るの?
その人達とは
そういう関係って事で…
じゃあ、私は…?