第8章 [う] うちにおいでよ。....R18
冴え冴えしい秋の空気。
見上げた空は青く高い。
冬が近づく小道を歩く俺の右手には、コンビニのおでんとおにぎりが入ったビニール袋が歩くリズムに合わせ揺れる。
すれ違う人の今だになれない関西弁の会話。
アスファルトを蹴る赤いALL STARの足取りは心なしか重い。
4月に大阪に引っ越してきて、一人暮らしを始めてから半年が経過したワケだが、忙しなく過ぎていく日々にどこか置いてきぼりな自分がいた。
ーーーーホームシック?
春休みに引っ越しを手伝ってくれた、研磨や木兎、赤葦やツッキーなんかには恥ずかしくて言えそうにないが、早く冬休みが来ないかって考えているあたり恐らくそうに違いない。
頬を撫でる冷たい風が、そんな気持ちを加速させる。
「そういや冬物が入った段ボールまだそのままだな、、、」
俺は厚手のパーカーのフードを被り、部屋の片隅に置いたままの段ボールの中の冬用のコートの事を頭に思い浮かべながら、一人暮らしのアパートに向けて足を早めた。
コンビニを出て程なくして、"旭ヶ丘ヒルズ"という看板が見えてくる。
俺が住んでる2階建アパートの名前。
築28年。
バストイレ別。
8畳の1K。
引っ越した当初は音駒バレー部のヤツらに、「クロさんヒルズ族っすね!」なんて言われたもんだった。けど、旭ヶ丘ヒルズは、六本木ヒルズの対極に位置するぼろアパートだから少し笑える。
外階段を上る頃には、ぶら下げていた昼飯のコンビニおでんはだいぶ冷めてしまったようで、容器から伝わる熱はほんの僅かだった。
コンビニまで徒歩10分。
チャリでも買うべきか?と思った時だった。
ドンドンドン!!
アパートの階段を登りきると激しくドアを叩く人がいて、俺は呆気にとられその場に立ち尽くした。