第2章 [く] クロ猫と傘と恋....R18
ただ、俺もオトコだから
溜まらないわけもなくて
でも茉莉さんだけは
抱きたくなかった
関係が変わるのが嫌だったんだ
一度抱いたら
俺はもう止まれない
茉莉さんを求めてしまう
それが、分かってたから。
俺は茉莉さんを好きになってた
認めたくなかったけど
茉莉さんが好きだった
身体が疼く日はソレを慰める場所へ
俺は帰った
そんでシレッとした顔で
紳士の様な顔で
また茉莉さんの
ぬくもりを抱き締めに行く
最低だと分かってるのに
『クロくん
好きなだけ居て良いよ』
甘い言葉に身を任せてしまう
「へいへーい。
茉莉さん、隣来て?疲れた…」
『…うん』
柔らかい身体にしがみついてしまう
散々他の女を抱いたのに
「茉莉さん…」
茉莉さんまで食いたくなる
『何?』
「…なんもない。
明日の朝、帰る。
また来るから…ベットは俺に
空けといてクダサイ」
『…うん、分かったよ』
茉莉さんの優しさにつけ込んで
”また”なんて曖昧な約束を取り付けて
他の蜜を貪る
そんな日々が続くわけないのに
なんで、バレないと思ったんだろう
『クロくん、どうしたの?
今日は一人?』
茉莉さんの声にハッとして
顔を上げると
『…傘、貸してあげる』
ニコリと俺に微笑む顔
「…茉莉さんは?
結構降ってきたのに…」
『濡れたい気分だから。
じゃあね、寄り道しないで帰りなよ』
でもその目は
あの日の様に悲しみに縁取られて
俺を見てた
「茉莉さん!」
『クロくん、ごめんね?
私…には無理。
キミの欲しい物は与えられない』
睫毛の手前で光った涙が
『…また、見かけたら声かける
さよなら』
落ちると同時に
茉莉さんは傘を抜け
涙は雨と混じった
追いかけられない伝えられない
俺の本当の気持ちなんか
この人には
ただの重荷なんだ
不釣り合いな傘をさして
携帯に手を掛けた