第7章 [ろ] ロザリオに愛を、薬指に口づけを。....R18
9月14日、金曜日。PM7:52
部活が終わって自宅に帰る電車に乗るために学校の最寄りの駅から電車に乗る。
「クロ、今月もなの。」
席に座りスマホゲームをやりながら、幼馴染の研磨が俺に問う。
「ああ。親には伝えてある。」
「そう。明日も部活あるんだから無理しないでね。」
「はいよ。」
がたん、がたたん。
目的地に進む電車。
いつもの駅より2つあと。
研磨が先に降りた出入り口から
俺は足を踏み出した。
ーーーーーー
キーケースの右から4番目。
家の鍵とチャリの鍵。
それから部室の鍵。
そして、もう一つ。
これから行く部屋の鍵だ。
駅から徒歩5分。
10階建ての8階の角部屋。
そのドアの鍵穴に右から4番目の鍵を刺し、回せば、ドアの鍵が開いた。
ドアノブを回せば、玄関からはふわり、出汁のいい香りがした。
「お帰り、鉄朗くん。」
「ただいま、茉莉さん。」
玄関のすぐ脇にあるキッチンに立つ茉莉さんが俺に目を向けて笑う。
ローファーを脱ぎ、出してあるスリッパを履くとそのままキッチンの茉莉さんを抱きしめた。
「会いたかった。」
「鉄朗くんったら。お世辞でも嬉しい。」
俺の腕の中でもぞりと動き、胸板に頬を寄せる彼女。
本当に会いたかったのに、その思いは一方通行だ。
「茉莉さん、今日の飯、なに?」
もやりとした気持ちを打ち消すようにそう話せば、茉莉さんは埋めていた顔を出し、俺を見つめた。
「今日は大根おろしの和風ハンバーグに切り干し大根の煮物。
じゃがいもとわかめのお味噌汁。」
「俺、じゃがいもの味噌汁好き。」
茉莉さんも、好き。
そんな言葉を飲み込んでそっと頭を撫でる。
茉莉さんはふわり、と笑って俺から体を離した。
「じゃあ、すぐにご飯にするから制服脱いできなよ。
着替えはベッドの上に置いてあるから。」
「うん、ありがとう。茉莉さん。」
にこり、と笑い、俺は奥の部屋へと足を向けた。
茉莉さんに背中を向けた瞬間、俺の顔からは表情がす、と消えた。