第10章 【番外編】イケオジ鉄朗と年下彼女
確かに私じゃ、高価なプレゼントや煌びやかな空間なんて用意できない。
そう考えれば、やっとの思いで選んだこの手首に巻きつくネクタイも、陳腐に思えてくる。
「茉莉?何考えてんの?」
「………何でもないです。」
「嘘。すげーなんか勝手に思い悩んでるだろ。」
「……黒尾さん、私なんかで良いんですか?…こんな大切な日に一緒にいるの。もっと、年も近くてキラキラした女の人いっぱいいるじゃないですか。黒尾さんみたいに完璧な人、私には勿体ないです……」
無意識にポロリと雫が頬を伝い、私はビックリして急いで手で拭う。溢れ出す言葉に、黒尾さんも複雑そうな表情を浮かべ、私の足を離した。
(何やってるの、私…今日は黒尾さんの誕生日なのに…)
「黒尾さん。私は、黒尾さんのイチバンですか…?」
居たたまれなくて逸らしていた視線を恐る恐る彼の方に向けると、すかさず目元にキスをされペロリと舌で涙を拭われた。
「茉莉さん?これ以上おじさんを夢中にさせる気ですか?」
「え…?」
「正直現時点でもうだいぶヤバいんだよなぁ。本当は金曜だけじゃなくて毎日会いたいし。もうバイトやめてずっとこの部屋いれば?って感じだし。つか、こうやって縛り付けて俺だけのものにしたいくらいなんだけど?プレゼントすげー嬉しかった。それ以外にもまだなんか俺にくれんの?」
刺さるような真剣な眼差しで詰め寄られ、私はゴクリと息を飲む。
いつも余裕そうで、甘く、穏やかに接してくる黒尾さんはそこにはいなくて、怒っているような、切ないような、そんな見たことのない表情。
「……私の全部、黒尾さんにあげます…」
「こらこら。そーゆう事は簡単に言うもんじゃ
「簡単とかじゃなくて!そのくらい本気って事です!!今日は…私が黒尾さんの……気持ちよくしますから。」
「おやおや…こりゃあ、参ったね。」
「ほ、本気ですからね…!?」
「そんじゃーさ。このかわいーお口で俺のを一回イかせて欲しいなァー。俺のお願い聞いてくれる?」
黒尾さんは甘えるような口ぶりで、そう言うと、悪戯に微笑んで私の唇にキスをした。