第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「そこの者…私の部下になにをした」
ジュンフィスの目は、石畳に寝転がったままのダーオカを見てる。
「…え…?」
「なっ…なんでもないんです!王よ!」
マサスが慌ててダーオカを庇うように立ち上がった。
「なんでだ!マサスが一体なにをしたというのだ!?」
「だ、だからっ…この者は、ナイルの娘を守っているだけで…」
「だからといって、マサスに危害を加えるなぞ…下民の分際でっ…」
「げ…下民って…」
ジュンフィスの目は怒りに燃えていた。
「お、王…!俺はなんともないからっ…」
マサスが言っても、ジュンフィスには届いていないみたいだった。
確かに…マサスはマツーオカ将軍付きだから、いいとこの坊っちゃんなんだろう。
だけど、ダーオカは俺を守りたい一心でこんなことしたのに。
「すっ…すみませんでしたっ…王よっ…」
ダーオカはやっと何が起こってるのか悟ったらしく、慌てて体を起こしてひれ伏した。
「許さんっ…」
ジュンフィスは盛大にキレ出した。
ダーオカの前に立っているマサスを、突き飛ばすように横に押しのけた。
「ちょっ…ちょっとまってっ…!」
突然、手に持っていた杖を振り上げたかと思うと、思い切りダーオカの背中を打った。
「待って!やめてっ…!」
思わず、ダーオカとジュンフィスの間に身を投げ出した。
「やめてっ…ダーオカは俺のこと守っただけだからっ…!」