第12章 荒ぶる昇竜と、乱華する牡丹
智の言葉をきっかけに、智の着物を一気に肩から剥いだ潤は、躊躇うことなく胸の先に吸い付き、舌先で転がした。
「ああ…、そのようにされては…」
「ここをこうされるのは嫌…かい?」
残る片方を指で捏ねながら問われ、智は赤らんだ顔で首を横に振る。
「じゃあ…、好き…かい?」
潤の意地悪に、智はぷいと顔を背けると、今にも消え入りそうなか細い声で「もっと…」と強請った。
気を良くした潤は、元々の不器用さがありつつも、智の身体を撫で、時には口付けを落とした。
ただ…
「一つだけお願いが…」
言われて顔を上げた潤は、小首を傾げて智を見下ろした。
「どう…した?」
「痕だけは…」
「え…?」
「痕だけはどうか付けないで…」
お師匠さんにもしこのことが知れたら、きっとただじゃすまない筈。
私はどうなっても構わないけれど、この人だけは…
後生ですから、と両手を擦り合わせ懇願する智に、潤は柔らかな笑みを向けると、頬に貼り付いた髪をそっと指で掬った。
「分かったよ。分かったから、そんな顔すんなよ、な?」
きっと今にも泣き出しそうな…、そんな顔に潤の目には写ったのだろう、優しく声をかけると、少しだけ身体を起こし、智の帯を解いた。