第9章 闇 報告
カカシが、つぎの言葉を口にしようとしたときだった。
コンコンコン……、ノックが火影室に響く。 その音に、三代目はドアへ目を送る。
「入れ」
「遅くに失礼します。 イビキです。カカシがアカデミーへ入るのを見かけたので、遅いとは思いましたが、来させていただきました。三代目、お話がございます」
暗部拷問・尋問部隊長森乃イビキが、火影室に入る。
「至急聞いていただきたいことが、ございます。 カカシ、お前もいっしょに聞いてくれ」
大柄で威圧的な表情を浮かべ、イビキがカカシのとなりへと立った。
「なんじゃ? なにかあったのか?」
三代目、猿飛は
すこし不思議そうな顔で聞いた。
イビキが夜遅くに、火影室に来る理由がないからだ。 カカシも疑問に思い、イビキの言葉を待った。
「ちまたで騒がせていた、放火魔についてです」
「ふむ、あれは若い男が快楽目的でやった愉快犯じゃろう? 解決しておろう……。ちがうのか?」
三代目がイビキに言った。古い木造の家や、使われていない家を次々と燃やし、火を見て喜んでいた。
数十件の連続放火魔は、捕まえてみれば、火を見て興奮する性癖を持つ、猫背で、若く内向的な男だった。
「花奏の家だけはやっていないと、頑として認めないんです」
イビキは、一呼吸おいて、
言葉をつなぐ。
「愉快犯の男が言うには、あんな真っ赤に目立つ家は燃やさない。すぐに足がつくからしない。 だいたい趣味が合わない……と。奴の目は、真実を語るように真剣でした。花奏の家は、別の犯人がいるはずです」
イビキが言ったあと、カカシは固まる。今日のヤナギと、花奏のやり取りを必死に思い出した。
"何言ってんだ、花奏ちゃんの家は昨日火事で全焼したじゃないか"