第26章 帰還
私は約束を守った。
「あのねカカシ、明日退院だよね。だから今日はしなくても……」
なんて私の小声は
カカシに届かない。
眠る前、病室をノックして、なかに入れば、ご機嫌のカカシが待っていた。
「ま、いいから来いよ」
カカシにベッドのなかに
押し込まれた私は
簡単に組み敷かれる。
「花奏……」
とろんとした熱を集めた瞳がぶつかる。欲情した熱い目が細まり、掛け布団のなかで、私の身体と重ねた。
「花奏、ごめんな、止めれないわ。許して?」
耳元で情欲的に誘うカカシの声に
私はあがなえない。
「もう…ん…ぁ」
私の耳から顎のラインを、滑るようにカカシは甘く唇を合わせた。息が荒くて、ねっとりした舌がつたう。
「…花奏……、シャンプーのいい匂いするね。石鹸の香りもするし、そそられるよ」
高い鼻先が私の肩に触れる。唇が私の首から徐々に鎖骨へと向かって、長い指先は、機嫌良くパジャマのボタンを外した。ついでにブラを緩めて、鎖骨部分に押し上げた。
「ん……カカシ……やだ、恥ずかしい…」
カカシが動きを止めて見つめる。
切なそうに。愛しそうに。
「明日楽しみだな。帰ったら腐るほど出来るね。あー…しかも全部花奏の中に出していいって、……最高だよね」
はだけた私の身体を見つめて
うっとりしてる。
カカシの顔が緩んでる。
「それは……そうだけど……」
私の頬は
たちまち熱く紅潮してしまう。
恥ずかしい。恥ずかしい。
結婚するのだから、当たり前だけど、やっぱり恥ずかしい。
「ーーでしょ?」
顔を傾けて、聞いてくるのだ。
いじわるに。ゆっくり近づく。
「う……うん……んん…」
銀の前髪が私の頬をかすめた。見下ろしたカカシの瞳に吸い込まれて、深く唇を合わせた。
「…っ……んぁっ」
舌が濃厚に合わさる。そのまま大きな手が、パジャマ越しから胸を触った。途端に甘い喘ぎが出てしまう。
「ん…ん…」
「花奏……オレだけ見て。お前を抱くとき、どんな風に抱いてるか、ちゃんとわかって抱かれてくれ。な?」
カカシは瞳を細めて笑う。窓には半分に欠けた月が浮かんでる。
「うん…」
私が微笑むと、カカシも
さらに目じりを下げて笑ってくれる。
私が見たかった笑顔。
いつのまにか…泣きそうになっていた。