第26章 帰還
あったかい大きな手が
私の手を握ってくれている。
花奏……花奏……。
私の名前をいっぱい
だれかが呼んでる。
だれ?
「ん……」
まばゆい光を感じる。
重いまぶたをゆっくりと開けた。
私は横向きになって
布団の中で寝ていた。
ベッドに柵がついてる。
自分の手に、なぜか空虚感が広がった。
さっきまで誰かが、
私の手を握ってくれていた気がした。
談笑の声。歩く声。咳する声。ナースコールの鳴る音。ドアを閉める音。いろんな音が聞こえる。
大きな窓から、見えた景色は、いつもの火影様の顔岩だった。
戻って来れたようだ。
イタチが連れて来てくれたのかな。
「……カカシは」
無事なのかな。心配だな。
「花奏先輩?起きました??」
左側から馴染みある声が届いた。私が顔を傾けると、猫面を頭につけたテンゾウが、パイプ椅子に座り読書していた。
テンゾウは私を見て
安心した表情を出した。
「体調はいかがですか?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
「そうですか。良かったです」
私は後輩の姿をチラッとみて
胸をなでおろした。
手や足にカットバンやガーゼで処置するけれど、入院するほどの重症ではない。
さすが初代の血継限界
木遁忍術を使えるだけある。
私は感心していた。
ただ。それでもテンゾウらしくない。暗部でチャクラを切らせて、疲れた姿を見せたことはあっても、大きな怪我をすることはなかった。ちらほら火傷の跡もある。さすがに今回は痛手だったようだ。
「テンゾウ、無事でよかったね」
私は目を薄めた。
「ハイ。ボクはなんとかギリギリ通院で済んでいます。花奏先輩、あ、すぐに医師を呼んできますね」
テンゾウは
本を閉じて席を立った。
「だって4日間も眠っていたんですから。容態を確認してもらわないと」
「え!?」
私の目はパチクリする。
「よ、よよ4日間も??そんなに!?」
一晩寝た気で朝を起きたつもりが、4日間も過ぎていたなんて。信じられない。
「え、え?待って。テンゾウ、じゃあカカシは??」
私は慌てて上体を起こした。途端に強烈な痛みが脇腹を襲う。
「っ……!!あたたっ…たたた……」
ギャァァアって叫びたい。激痛が走る。
皮膚を引っ張るような感覚。痛い。とにかく痛い。