第25章 戦闘の終焉
「マジで、……痛いな」
「当たり前だよ。もう無茶しないで。なんで私を助けたの……もうダメだよ」
暗部に鉄則がある。
命を大事にすること。
仲間を守る為に
自分は犠牲にならないこと。
カカシは完全に
規則破りだ。
私がダメだ言うのに
カカシは優しく目を細めた。
「花奏はね、オレより先に死んじゃダメなんだよ。子供や孫に囲まれて、笑って、長生きするのよ」
「いいね、それ」
なんて幸せな未来なんだろう。
夢のような話だね。
根城を出た。真っ暗な夜の世界。
静かな壮大な山々が待っていた。
「カカシ、だけどね。カカシの方が大切だよ。ろ班隊長でしょう?命は大事にしなきゃ」
喋りながら、
恐ろしい気持ちに変わる。
この山々をくだるのか。
カカシは生命危機な状況なのに。
「早く帰ろう…」
自分の肩にカカシの腕を乗せて、
傾斜が続く山道を歩いた。身体に重しを乗せたように重い。
「花奏」
地を向けたカカシに大粒の汗が流れ落ちる。微かに口を開けた。
「無理すんなよ、オレを置いていけ」
「ー⁈い、意味わかんないこと言わないで。ほら、がんばって。ね?…ごめんね。私も体力とか、全然残ってなくて……」
枯葉を踏んで砂利道を歩く。なかなか進めない。重たい荷物を引きずるようだった。
「早く帰って、治療してもらって、温かいご飯食べようよ。私作るよ?カカシの好物をさ、いっぱい作るから。ね?」
明るい話をしてるのに
涙がでていた。
「あーー、いーね、それ…」
「でしょう?ナスの味噌汁とか、サンマの塩焼きとか、私の好きなオムライスとか、また食べに行きたいよ」
深傷を負ったまま、何十時間も歩いて病院に向かうほど、時間の余裕はいま、残っていない。
視界が涙で滲んだ。目のふちが紅くなる。カカシがこのままじゃ…死んでしまう。それだけは避けたい。
私は声をかけ続けた。
喋り続けた。
「カカシ…ねぇ、私と結婚しようって……言ったよね。私に、家族を作ってくれるんだよね?」
早く。早く。早く。
進まなきゃいけないのに、
なんで、力がないの。
私はどうして女なの、
どうして、力を残していないの……。