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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第22章 葬儀と日常生活へ


翌日。

日が落ちる頃、
私は葬儀場へ出向いた。

うちはフガク様、ミコト様の通夜の為に。

「夕方で良いぞ」

三代目は酒の席で、
そう話した。

街の離れを歩くと、「木ノ葉葬儀場」の看板の文字が見えた。大きな会場の門前には、白く大きな御霊燈。暗くなる景色を、両端で優しく灯した。

案内看板は立っていない。
意味は密葬だ。

会場のなかへ入ると、
立派な白木祭壇が私の目に飛び込んだ。

白い薔薇やピンクの薔薇が
隙間なく祭壇を飾る。

上段では、優しく微笑む黒髪の女性と、
厳格ある風貌の男性の遺影が並んだ。

ミコト様とフガク様だ。

祭壇の前には
うちは一族の家紋が刻まれた
檜の棺が並列する。


圧倒されるほどの大きな祭壇。
豪華な花。高級な果実。

それなのに…。

会場はやけに静かだ。
喋り声はしない。

喪服姿で静かに黒髪の少年は
いちばん前で座る。

小さな背中が
やけに寂しそうに思えた。


なぜ…
ひとりでいるのだろうか。


首を傾げる私は祭壇へ近寄った。

線香の煙や
ろうそくに灯る火の匂いが深くなる。

私が近くまで歩を進めると、

サスケ君が振り返り、
椅子から立ち上がった。

そのまま私の方へ駆けて来たのだ。


「花奏!!」

「っ、サスケくん…」


緊張した顔が緩まる。
安堵を浮かべた表情のサスケくんが
私に近寄った。


「遅いよ…花奏……」

すぐさま、私の黒い喪服の裾をぎゅっと掴んだ。小さな手が小刻みに揺れる。その手を覆った。サスケくんの手の先が、ひんやりと冷たかった。


「なんで…なんで!こんなに遅いんだよ、ずっと待ってたのに…」


サスケ君の
うつむく声は小さい。

「待ってたのに……」
「えっ…そうなの!?…ごめんねサスケくん。あれ、…三代目は?」

人気がない。

端に立つのは、
黒いスーツ姿に身を固める葬儀関係者だけ。

「式の準備をしてる。式に出席するのは、花奏とオレだけにしてもらった。家族葬だから……」


「…え、でも私も良いの?」



「うん。三代目は絶対出席するって言ったんだけど、……オレが断った。花奏だけで良いって伝えた」


サスケくんが私を見上げる。
大きな瞳に、くっきりと悲しみが滲んだ。

何時間も泣いたように、
サスケ君の瞳は赤く充血していた。
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