第16章 小さな手
「徐々に身体が戻ってますね。普通の赤子より成長スピードが速い。 姿的に、今3カ月ぐらいでしょうか」
イタチは首がすわる花奏の脇を抱えた。フラフラだった首。いつの間にか安定している。
「んー、この調子じゃ、すぐに戻るかもな。 イタチありがとうな。 また頼んでいいか?」
カカシは赤子を受け取るつもりで手を伸ばした。イタチは花奏の顔を見て固まっていた。
……イタチは離れがたいのか? カカシの目にはそう映った。
「お、イタチも花奏の可愛さにやられた?」
カカシの声は悪戯をする子どもみたいだ。たまには焦るイタチを見てみたい。
「…そうかも、しれない…ですね」
イタチは肯定し、じぃっと花奏を見た。可愛い今の姿。早く戻って欲しいのか。よく分からない。
「ヒャク…………ヒッ……」
しゃっくりをあげ続ける赤子は、じぃっと見てくるイタチに、ふわりと笑う。
自惚れかもしれない。
「またね」
と言ってるみたいに見えた。
イタチは、もう一度ぎゅうと肩口に引き寄せて抱きしめた。触れる肌が気持ち良く温かい。ミルクの匂い。優しい気持ちになれた。
また……次回、
楽しみにしています。
赤子をカカシに渡したとき、イタチは心の中で気持ちを伝えた。
「カカシさん、また休みのときにオレを頼ってください。花奏さんが元に戻るまで、……協力しますよ」
期限は……戻るまで。
まだ間に合う。出来ることをやれば未来は変わるかもしれない。
淡い期待だがな……。一瞬暗く目を伏せたイタチの前に、小さな指が現れる。
「ひっ………ヒャク………ぁあ、……あ、ひっ……」
「ちょっと、花奏? どうしてイタチの方に行くのよ、危ないでしょ?」
カカシが赤子を抱き直す。首を振ってイタチの方に手を伸ばす。暴れる赤子にテンゾウが笑った。
「イタチの方が良いんじゃないですか? 」
途端にカカシの目はむいた。
「はあ!? 花奏どういうことよ?浮気!?」
ーーなんて変な先輩だろうか。3カ月の赤ちゃんに何を言ってんだろう。
テンゾウは半眼でやり取りを見て、ふと気づく。門に近づく異様な気配に、目を疑った。