第16章 小さな手
次の日。約束の時間を30分程度過ぎてから、うちは街の門前で落ち合った。
ぜぇぜぇ……と、口が半開きで息を切らすテンゾウと、ひたいに汗がにじむカカシ。全力疾走で戻ってきたらしい。
「カカシ先輩〜〜! もーー飛ばし過ぎですってーー。 しんどいんですよ!」
疲れた……と、テンゾウは門の柱にもたれた。
「あはは、悪い悪い。 ちょっと頑張り過ぎちゃったね」
中腰の姿勢で、ふぅ……と大きく深呼吸をして、カカシは顔を上げた。
目の先に、まんまるの赤子がイタチに抱かれる。うん、問題ないね。
「ひっ……、ヒャクッ……!……ヒッ……」
花奏は数分前からしゃっくりが止まらない。変な声を上げる。ミルクを飲み、ゲップをした赤子に、しゃっくりは頻繁に起こる。
「ヒャク…………ヒッ……」
赤子のしゃっくりは身体全体で動く。横隔膜が痙攣するたびに、ビクッとお腹が大きく動く。それに合わせて声も出た。
「ヒャク…………」
「100? 変なしゃっくりだねー」
カカシの表情は安堵を浮かべ、穏やかに変わる。行きと変わらず、元気な赤子の姿。それが一番。
イタチを信頼していた。ただ、そうは言っても、やはり心配だった。カカシの頭の片隅には、いつも花奏のことを気にかけていた。
「あーごめんね、イタチ。 もうちょっと早く帰りたかったんだけど、敵襲に遭ったのよ。 迷惑な話だよね…………ん?」
?……アレ?
ん……?んん……??
カカシは赤子に食い入るように近づく。あれ、お前なんか……
「顔……、いや違うか。 全体的にデカくなってるよね」
花奏が着るボーダー柄のカバーオールの腕や足の部分が、ぴったりサイズ。
別の服任務に行く前は、手や足が服から出ていなくて、ゆるゆるだった。……だいたい頭の大きさが違う。
花奏手が、ぎゅうっと
イタチの二の腕を掴む。その手も一回り大きい。