第16章 小さな手
「頑張ってるな……サスケ……」
イタチは目を凝らした。手裏剣を真ん中付近に、軽快に当てるサスケ。ほかの者は的に当てるのもやっとだ。当たらない生徒の方が多い。
周りよりも抜きん出ているのは、サスケは帰宅後も、手裏剣やクナイの自主訓練を行っていたからだ。
うちはの血筋に甘えないサスケを、イタチは誇らしく思えた。
「キャーー!サスケ君カッコ良いーー!!」
周りの女の子から、
次々と黄色い声援が送られる。当の本人はいっさい興味はなさそうだ。
「あんなの、楽勝だってばよ!」
野郎からは嫉妬の目や、羨望の眼差しが飛ぶ。金髪頭の活発な男の子にイタチは注目していた。
あの子は……4代目の子……。名は確か……うずまきナルト。
それは一部の人間しか知らぬ情報。
イタチは知っていた。機密情報を常に把握していたからだ。
まだまだ成長途中。これからだろう…。
「あ、あぅ」
「ああ、……見たいですか?」
身体を拗らせてアピールする赤子。イタチは、首を支え、身体を持ち上げ、座る体勢にして花奏に見せてあげた。目を丸くして授業の様子を見る赤子。不思議そうに見ていた。
「よーし、今のは練習だ。今からテストするぞー」
顔のちょうど真ん中に、横一文字に大きな傷がついた新米教師が笑顔で言う。
「えーーー、イルカ先生、ヤダーー!」
7歳の生徒達は一斉に反対の声を上げた。だが、一部は盛り上がる。
「サスケ、ぜってえ勝つ!」
「うるさい。ウスラトンカチ」
「あーめんどくせ〜」と木にもたれかかり居眠りをする少年もいた。
イタチは一連のやり取りを見て、口を緩めた。平和が大事だ。自由に学ぶ権利を、子ども達から取り上げてはいけない。戦争で得るモノなど何もないのだから。