第12章 闇 終焉の地
「仲間だなんて
まだ生温いこと言ってんだ?俺の嘘は見抜けないよね。カカシのは分かるくせに。花奏ちゃんは、だから甘いって言われるんだよ。人を信じすぎる、ただのお人好しだよ?」
「いや…いや!…やめ……」
意識が途切れそうだ。
目から涙が伝う。
「なあ、早く抵抗しろよ? 本気でカカシより先に死ぬよ? 」
嗤うヤナギが悪魔に見えた。
私は、ゆっくり腕を下ろした。
ジャージのポケットを弄り、キャップを外す。
馬乗りでヤナギに
首を絞められている。
カカシを助けなきゃ。私しか救えない。今抵抗しなきゃ共倒れだ。
「ヤナギ……、今からすること許して……!!」
私は横に大きく円を描くように
うでを振った。
空気を切る音と、何かに当たる音。
「!!」
ヤナギは、即座に私から距離を置いて、首すじを触る。だらりと流れ落ちる赤い血。
「ゴホゴホ……! はぁ……はぁ……」
私の手には小さなクナイ。
ヤナギにもらったモノだ。
「っ……花奏ちゃん……」
首すじを押さえて喋る顔は、
なぜか安堵した表情だ。
「残念だな、傷は浅いぜ?」
しまった……。でも今は……
「っ………ゲホゲホ……」
私は咳き込み、カカシの方を見た。水泡はもう水面から浮かんでいない。
「んだよ、俺があげたクナイじゃねえか、それ」
首を押さえて喋るヤナギの首には血が滲む。ゆっくりゆっくり
私の方に歩いてくる。
「やっぱ殺すしかねえな」
「はあ……はあ……、来ないで……」
後ろは谷底。大量に水が流れていく音が響く。霧が立ち込める。
「私はカカシを助けなきゃいけないの……もうお願いだから、これ以上邪魔しないでよ!」
私は振り返って、
そのまま谷へと飛び込んだ。