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短編集  Dear my precious…

第25章 初めてはいつも貴方で*赤葦京治[ハイキュー]


~後日談~

最近は梟谷の皆さんにも知られるようになり、話すことも多くなった。

まあ私があの日以来学校に来ることに躊躇いを覚えなくなって、ちょくちょく遊びに行ったりしているから、当然と言えば当然だけど。

「そういえば、赤葦は南のどこが好きなの?」

最初は私を警戒していた木兎さんだったが、慣れてくれたようだ。こんな言い方すると年上のようには思えないが。

「…それは私も聞きたいです。」

あの時のお返し代わりに彼を見上げる。
そしてあの時のようにみんなの視線が集まった。
これは言うしかないよね?

「………」

「はーやーくー」

木兎さんがいつもと変わらぬトーンで急かす。
赤葦くんは相変わらず冷静に木兎さんを見て(にらんで?)いる。

早く、早くと木兎さんに便乗して私も心の中で急かした。
気持ちが伝わったのか、彼の口が動く。


「……こんなところで言いませんよ。じゃあ俺たちこっちなんで。」

くるりと向きを変え、スタスタと行ってしまう。
驚いた私は「さようなら」とだけ言うと赤葦くんの後を追った。

彼の隣に並ぶ。

私っていいとこ無いのかな…
なんで赤葦くんは私を好きって言ってくれたんだろう。
もしかして今は気持ちが離れちゃってたりするの…?

先ほどの言葉が私をどんどん不安にさせていく。

「なに考え込んでるんだよ。」

その声に顔を上げると、薄く微笑んだ彼がいた。

「別に…」

「あ、さっきの答えだけど。」

言葉の直後、彼の唇が私の耳に触れる。

「え?…えっ?!」

いきなりのことに私の思考回路はすっかりショートし、全身に熱が帯びる。
触れた部分を両手で覆っていた。

「奏のそういうところが好き。」

パンっ。

何かが弾けたような気分。
私はこんな感情を知らない。

彼といると初めてばかり。
段々訳が分からなくなってくる。

「大丈夫?」

「…大好き。」

「え、」

「だから大好きなの、京治がっ!」

本当にわからない。
でも急に貴方の名前が呼びたくなった。

未知との出会いは、ドキドキを加速させる。
そんなことを今ふと思った。
貴方といるとらしくない自分になれるみたいだよ。
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