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短編集  Dear my precious…

第17章 いつもそばに。*桜井良[黒バス]


僅かに暖かさを運ぶ風が、春の訪れを告げる三月のある日。



「…………」

私はあまりの光景に声を失っていた。

教室にいる男女がキスをしている。


(なん…で……?)

頭が真っ白になる。
思考が追いつかない。

ただわかるのはその男が『彼』と言うことだけ。


彼は傷ついていた私を励ましてくれた。

支えてくれるって約束してくれた。

……好きって言ってくれた。

前に進めるんだって思えた。



なのに…!


私は唇を噛み締め、その場から逃げるように走った。

信じたくなかった。
確かめたかった。

でも逃げることしか出来なかった。



(…愛する人を失うことなんてしたくなかった……っ!)

でも私はまた失ったんだ。
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