第14章 幸福②(輪虎side)【R18】
しばらくしても葵はぼんやりしているようだ。
「大丈夫?」
嬉しくて満面の笑みで顔を覗いたけど布団の中に隠れてしまった。
そんな姿がまた可愛いくて意地悪したくなる。
「葵~」
楽しくなって声をかけたけど無視された。
「はは、そう来る?」
するりと布団の中に入るとぎゅっと抱き締めた。
「ねぇ、葵~」
「な……何…?」
「こっち向いてよ~」
「無理……」
「しょうがないな~、よいしょ。」
赤くなって小さく丸まっているから仕方なく強制的に僕の方を向かせた。
「そんな可愛いことすると襲うよ。」
冗談半分にニッコリ微笑むと葵は僕の胸に手をそっと置いて顔を埋めた。
「ホント…無理……」
その姿に僕が白旗を上げる番だった。
「分かった。じゃあ、今日はこのままで許してあげる。」
クスクス笑いながら囁くとぎゅっと抱き締めそのまま二人で微睡んでいった。
夜明け前…ふと眠りが浅くなると葵が僕から離れようとしていることに気付き思わずぐっと抱き寄せた。
「どこ行くの?離れないで…」
それはまるで懇願だった…
「起きてたの?」
「ん~…?君がどこかへ行こうとしてたのに気付いたから…」
「喉が渇いたから水が飲みたくて…」
寝ぼけながらも腕に力を込めた。
「ダメ。夜が明けるまでは僕の腕の中からいなくならないで…」
それだけ言うとまた深い眠りについた。
「うん…どこにも行かないよ…」
葵が呟き抱き締め返してくると何だか安心していた。
それはとても温かくて心地いい…
あの日、直感で握った手は間違ってなかった…
ずっとこの腕で抱き締める…もう離さない…
初めて感じた幸せな時間がずっと続くよう心のどこかで祈っていた……