第13章 幸福①(夢主side)【R18】
輪虎の温かさがなくなっても私は動くことが出来ずぼんやりしてた。
「大丈夫?」
突然、満面の笑みで顔を覗かれるとさっきの事を思い出して思わず布団の中に隠れた。
「葵~」
布団の外から輪虎の楽しそうな声が聞こえたけど恥ずかしくて無視してしまった。
「はは、そう来る?」
するりと輪虎が布団の中に入って来るとぎゅっと抱き締められた。
「ねぇ、葵~」
「な……何…?」
「こっち向いてよ~」
「無理……」
(絶対、今まともな顔してない……)
赤くなってさらに小さく丸まっていた。
「しょうがないな~、よいしょ。」
掛け声と共にくるっと輪虎の方に向かされていた。
「そんな可愛いことすると襲うよ。」
ニッコリ微笑まれホントに目も合わせられなくて輪虎の胸に手をそっと置くと顔を埋めた。
「ホント…無理……」
「分かった。じゃあ、今日はこのままで許してあげる。」
クスクス笑いながら囁かれるとぎゅっと抱き締められそのまま二人で微睡んでいった。
喉が渇いて目が覚めたのはまだ夜明け前だった。
輪虎に抱き締められていたけど少し体を横にずらして起き上がろうとした瞬間、ぐっと抱き寄せられホントに驚いた。
「どこいくの?離れないで…」
それはまるで懇願だった…
「起きてたの?」
「ん~…?君がどこかへ行こうとしてたのに気付いたから…」
「喉が渇いたから水が飲みたくて…」
明らかに半分寝ているのに腕に力が込められ離してくれない。
「ダメ。夜が明けるまでは僕の腕の中からいなくならないで…」
そう言うと輪虎はまた深い眠りに入っていた。
「うん…どこにも行かないよ…」
何だか安心させたくてそう呟くと私もぎゅっと抱き締め返した。
その肌は温かくてとても心地よかった…
あの日、初めて触れた温かな手は今私の全てを抱き締めてくれている…
ずっとこの腕の中にいたい…ずっといれる…こんな幸せな時間がずっと続いて欲しいと願っていた……