第11章 名前①(夢主side)
「そろそろ『様』は止めようか。」
「へ……?」
頭がボーッとしててまた意味が分からなかった。
「最初に言ったよね?名前で呼んでって…『様』も慣れるまでって…」
それは初めて会った日に言われたこと。もちろん覚えてはいた。
だけど…夜着の上から体の線をなぞられながら言われるから考えが纏まらなくて言葉も出ない…
「やっ…待って……」
「名前を呼んでくれたら止めてあげる…」
手はいつの間にか夜着の裾から入って来ていて太腿を優しく撫でられていた。
「あっ……輪…虎……」
涙目で見つめながらどうにか名前を呼ぶとようやく手の動きが止まった。
またぎゅっと抱き締められるとそっと囁かれた。
「もう一回……」
その声すらゾクゾクする……
「輪虎…」
ふっと微笑むのが分かった。
「よく出来ました。また介子坊さんの所に行かないとダメだから今はここまで…
だけど今晩、君の全部を貰うから…」
「ひゃっ……!!」
耳元で囁かれ耳にキスされるとようやく離れてくれたけど物凄く変な声が出てしまった。
そんな私をクスクス笑いながら見ると「介子坊さんに昨日のお返ししないとね~…」と危ない雰囲気で出かけて行った。
残された私は自分の体が疼いているのに気付いて戸惑うばかり……
その日は一日落ち着かなくてずっとそわそわしてた。
夕方、輪虎は上機嫌で帰ってきた。
あまりに機嫌が良すぎて何があったか聞くのが恐ろしい程に…
それでも今朝のことがあったから私は必死に目を合わせないようにしていて、輪虎はそんな私をずっとクスクス笑いながら見つめていた。
(こんなに意識してる方がおかしいのかもしれないけど、意識しない方が無理…)
赤くなりながらそればかり考えていた。
暗くなると夕食を食べ湯あみをして、私は部屋で落ち着かない時間を過ごしていた。
窓から見上げた空には欠け始めた月が浮かんでいる。
星もたくさん出ていて明日もきっといい天気…