第9章 口付け①(夢主side)
少し怖くなって何とか逃れようと顔を背けた。
でも顔を背けた首にキスが落ちてきた。
「んっ……」
軽い痛みが走って思わず声が出た。
輪虎様の指がそれをなぞりながら顎まで来ると顔を正面に向かされまた目が合った…
「ふふっ、綺麗に跡がついたよ。」
それは妖艶な笑み…どんどん顔が赤くなって自分が分からなくなりそうで…
(ちょっと怖い…でももっと…と思ってしまう…)
「輪虎様…」
思わず消え入りそうな声で名前を呼んでいた。
「なぁに?それはもっと…ていう意味かな?」
「…意地悪……」
否定できなかった。
「知ってる。僕、結構嗜虐的なんだよ。」
ニヤリと笑みがさらに深くなった。
体の芯が熱い…そう思った時、輪虎様を呼ぶ介子坊様の声がした。
「輪虎ー!殿がお呼びだ。どこに行った?」
はぁぁ……と今まで聞いたことない深いため息を輪虎様が吐いていた。
「ごめん、今日はここまで。葵は酔って寝たことにしておくからこの前の部屋で休むんだよ。おやすみ。」
そっと額にキスされると輪虎様は行ってしまった。
「はいはーい。すぐ戻るよー。」
それはいつもの声。
だけど、残された私はいつまでも体の熱が冷めなかった…