第6章 自覚②(輪虎side)
「いいの。僕がしたいだけだから。」
ニッコリ微笑むと素直に受け取ってくれた。
「あの…ありがとう…大切にするね。」
「どういたしまして。じゃあ、行こうか。」
そう言うと手を繋いだ。
でも、葵が笑っていないことは随分前に気付いている。だから振り返って見つめた。
「ねぇ、葵。笑って。」
「え……」
「僕、葵の笑顔好きなんだ。だから笑ってくれないかな?」
「輪虎様…サラッとそういうこと言うのは反則だから…」
真っ赤になって俯く葵に僕の嗜虐性が刺激される。
「う~ん…聞こえない~」
イタズラに微笑むと手を引いてまた歩き出した。
「だから、それは聞こえてるから!」
少し拗ねた様な声がしたけどその時、初めて葵が手を握り返してくれた。
そんな些細なことが嬉しい…楽しい…愛しい…
(あぁ、僕はこの子が…葵のことが好きなのか…これが人を…女を愛しいと想うことなのか……)
自分の想いを自覚すると何だかくすぐったい…
思わず葵を優しい眼差しで見つめていると目が合った。
すぐに目を逸らされたけど、その目も僕と同じ想いのように思えた。
(葵も僕と同じ想いだと勘違いしていい?君のその笑顔をずっと見ていたい…この手を離したくないんだ……)
顔が少し赤くなるのが分かったけど自覚した想いはもう止められない…
空は綺麗な夕焼けを映し葵の顔を赤く照らしていた…