第1章 出会い①(夢主side)
「葵!外の掃除しておいで!早くするんだよ!仕事は山のようにあるんだからね!」
そう上官に言われ箒を持って外に出た。
季節は春を迎え空は抜けるような青空。現代の日本より青空は透き通っているように思えた。
「いい天気…あ、これ夜来香(イエライシャン)の花の芽だよね?おばあちゃん家の庭にあった…はぁ戻れるのかな?……」
そう一人呟くと自然と歌を口ずさんでいた。
それは昔おばあちゃんがよく歌ってた歌。
歌いながら掃き掃除を始めた時……
突然、後ろでドン!と凄い音がした。
驚いて振り返ると一人の人が立っている。
(えっ?誰?…若い…男の人?兵??……)
もう完全にパニックで言葉もなく目を丸くして立ち尽くしていた。
するとその男の人が笑顔で話しかけてきた。
「あはは、ごめん。ごめん。さっきの歌は君が歌ってたの?」
(歌を聞かれていた?…そういえば他国の歌を歌うと敵国の間者に間違えかねられないと聞いたことがる…と、いう事はこの人は魏兵で私を捕まえに来た…?)
怖くて体が小刻みに震えていた。
教えてもらったように膝をつくと震える声で答えた。
「……はい……私が歌って…いました…申し訳ありません……」
腰の左右に二本の剣があるのが見え、このまま斬られる?そんなことばかり考えていた。
すると予想とは違う軽やかな声が聞こえてきた。
「どうして謝るの?それよりさっきの歌は魏国の歌なのかな?聴いたことのない歌だったんだけど。」