第5章 自覚①(夢主side)
翌朝、いつも通り目覚めた。よく眠れ気持ちのいい朝…
輪虎様が用意してくれた綺麗な服に着替えて髪も綺麗に結ってみた。
それはこの世界に来てからしたことのないことでそんな些細なことが嬉しい…
そして外に出ていつも通り思いっきり伸びをして深呼吸すると輪虎様が見えた。
同じように伸びをしてて何だか可愛い…
「輪虎様!おはようございます!!」
元気に挨拶した。
「おはよう、葵。よく眠れた?」
優しい笑顔で言われてまたドキッとした。
「はい。こんな綺麗な服まで本当にありがとうございます!」
そう言って深々と頭を下げた。
「あはは。気にしないで。僕がやりたいだけだから。ねぇ、葵。ちょっとそこでクルッて回ってみて。」
少し戸惑ったけど言われるまま軽く手を広げて回ってみた。
「こう?」
「うん。やっぱり可愛い。」
あまりにサラッと言われてかなり恥ずかしい…
顔が赤くなるのが分かったけど止められるはずもなく何も言えずに俯いてしまった。
輪虎様の笑い声が聞こえるとまた手を握られ朝食を食べに屋敷の中に連れて行かれた。
それからは宮女として働いていた日常とは違う毎日だった。
輪虎様は毎日のように王宮や訓練にと出かけ、私は屋敷で下女と花を植えたり裁縫や料理を教えてもらったり………
夜は一緒にご飯を食べて他愛ない話をして…輪虎様はいつもニコニコしていて…
そんな毎日が楽しくて仕方なくて私もいつもニコニコしていた。
そして、輪虎様が時々見せるイタズラな表情、真剣な眼差し、寂し気な横顔にドキッとさせられて…
それは今までからは考えられない穏やかな時間…この世界に来てから初めて訪れた平穏…心の凪……