第4章 早駆け②(輪虎side)
「あはは!何それ?君、意外と負けず嫌いなんだね。ホント面白い。」
「面白いは誉め言葉…?」
「ああ、ごめん。面白いじゃないね。可愛い。」
素直に自分の思いを口にすると何故か葵は真っ赤になって俯いている。
そんな葵がまた可愛いく感じて初めてドキッとした。
(ホント不思議な子。この僕がドキッとするなんてね…)
部屋に着き葵を下ろすときちんと女性用の物が用意されているのを確認した。
(まぁ、急だったからこんなもんか。後は追々揃えたら大丈夫だね。)
すると屋敷の下女がやってきて半強制的に葵を湯あみに連行して行った。
戸惑う葵がまた面白くて…いや、可愛いくてクスクス笑いなから手を振って見送り、自分の部屋に戻ると葵が出たのを確認してから僕も湯あみに向かった。
そこで湯船に半分沈みながら考えていた。
(しかし……これからどうしたものか…連れて帰ってきたのはいいけど…普通はまぁ、そうするんだけど……何かそんな気になれないんだよな~…)
お湯に1回沈むとザバッと上がった。
部屋から見た夜空には満月に近い月。少し明るい夜だ。
剣を持ち庭に出ると軽く振った。
(殿と戦場に立つのは楽しい。あれは例えようのない高揚感ある。でも、今日葵と一緒にいて初めて戦場以外が楽しいと思った。
何でだ?今までだって勿論、女がいなかったワケじゃない。何が違うんだ?
……ダメだ。分からない。もう少し葵と一緒にいたら分かるのか……?)
剣を仕舞うとまた同じことを考えながら眠りについていた。