第4章 早駆け②(輪虎side)
葵の手を繋いで向かった先は馬屋。自分の馬に乗るためだ。
そこには私兵が数人いる。
「輪虎様!」
「明日の訓練ですが…おや?その下女は?」
何人かが話しかけてくると無遠慮な視線を葵に送っている。
「ん~?さっきあっちから拐ってきた。」
笑顔でそう返すとみんな面白いくらい驚いていた。
「はっ?えっ…?」
一瞬の沈黙の後、凄い声が響いた。
「えええぇぇぇっっっ!!!」
「わぁぁ、凄い声…」
「あ、あの輪虎様?まさか連れて帰るおつもりですか!?」
みんな金魚みたいに口をパクパクさせていて面白すぎ。
「あはは!そうだよ~あ、そうだ。誰か屋敷に行って女性用の部屋を用意しておくように伝えておいて。夕方には帰るから。」
そう伝えると葵を抱えて馬に飛び乗った。
後ろでは兵達が何かを言っていたけど無視して走り出した。
馬を走らせていると葵が僕に必死に掴まり目をぎゅっと瞑っている。
「ねぇ?もしかして馬に乗るの初めて?」
全く余裕のない葵は必死に首を縦に振っている。
「そっか。でもせっかくだから目を開けてごらん。勿体ないよ。」
体を抱えている左手の力を僅かに強くするとうっすら目を開けるのが見えた。
「わぁ…」
景色を見た葵から感嘆の声が聞こえると嬉しくなる。
「ね。いい景色でしょ?外に出たからもう少し飛ばすよ。」
王都の門を出るとさらに速度を上げた。
「ちょ……速すぎ!」
怖がる葵がさらに僕にしがみ付いてきてまた面白くなる。
「あはは、聞こえない。」
「それ、聞こえてるよね!?」
からかうように笑うと葵も負けじと強く言ってきてそれが楽しくて本当に笑顔になっていたと思う。