第3章 早駆け①(夢主side)
屋敷に着くと数人の下僕が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。お言い付けの通り女性用のお部屋を用意しております。」
「うん。ありがとう。」
そう会話しているのを聞いていると横抱きにされていた。
(えっ?何でこの状態?)
戸惑いながら話しかけた。
「あの…自分で歩けるよ…?」
「ん~…でも僕がこうしていたいから気にしないで。」
「いや、でも重いし…」
「君、軽いよ。もっと食べないと。」
(私を軽く感じるなんてどんな筋力してるんだろ?てかこの状態かなり恥ずかしい…)
「それは輪虎様が将軍だからでしょ!」
それは精一杯の照れ隠し。少し怒ったように唇を尖らせた。
「あはは!何それ?君、意外と負けず嫌いなんだね。ホント面白い。」
(ダメだ…敵わない…でも面白いって…誉められてる?からかわれてる?)
「面白いは誉め言葉…?」
「ああ、ごめん。面白いじゃないね。可愛い。」
そう言って笑顔で見つめられた。
(急に可愛いなんて言われたらどうしていいか分からない…)
真っ赤になって俯くことしか出来なかった。
部屋に着くとようやく降ろしてもらえた。
部屋にはきちんと女性用の物が用意されていてそのどれもが素敵なもの。
すると屋敷の下女と思われる人達がやってきて半強制的に湯あみに連れて行かれた。
その様子を輪虎様はクスクス笑いながら眺めて私に手を振っていた。
浴室で一人になると考え込んだ。
(これからどうするんだろ?女の人を屋敷に連れ込むってことはそういうことだよね…?
私だって意味が分からないワケじゃない。でもそんな急に?いや古代中国ならそういうもの?)
色々考え過ぎなくらい考えていたけど、その夜輪虎様が私の部屋に来ることはなかった。
ドキドキしていたけどいつの間にか深い眠りにつき久しぶりにゆっくり眠れた夜だった。
空には満月に近い月がかかり私の寝顔を優しく照らしていた。