第29章 帰還②(輪虎side)
またどれくらい経っただろうか。
次に気が付いたところは真っ白なところでふわふわ浮いているような感覚がした。
「これは……夢…?それともこれがあの世ってやつかな……」
するとどこからともなく歌声が聞こえた。
(綺麗な歌声…それにこの歌はよく覚えてる。葵と初めて会った時に歌っていた…)
「相変わらず綺麗な歌声…これも夢なのかな………」
ふふ…と微笑むと目が眩みそうなくらい光が明るくなり体を持ち上げられる感覚がした。
そしてゆっくりと目を開けた……
気付くと目の前に葵の泣き顔が見えた。
(え………?葵…?何で泣いてるの?ここは……?)
疑問が次々に浮かんだ。そして体中が痛かった。
それでもゆっくり右手を上げると葵の頬に触れた。
涙で濡れているけど温かい葵の肌…
「……これは夢…?僕はまだ夢を見てるの…?」
葵の瞳からは止めどなく涙が溢れている。
「……っ…何度も…何度も夢に見たよ…輪虎が…私のところに…帰ってくる……でも……もう夢は嫌だ………っ……」