第27章 前へ(夢主&輪虎)
どれくらい経っただろうか…
ふと目を覚ましたのは真っ暗なところだった。
何の光も音もなく右も左も上下さえ分からない漆黒の闇の中……
「……ここは?…僕は死んだのか?」
体は鉛のように重く手も足も動かなかった。
「葵、ごめん…君は泣くんだろうね…それとも怒るかな?ふふ…殿は怒るだろうな…最後の最後でお役に立てなかったな…」
そのまま目を閉じてもう一度眠ろうとした時、左手にお守りがあることに気が付いた。
鉛のように重い手を何とか上げると暗闇の中、僕の似顔絵とクローバーの刺繍が見えた。
『クローバーは幸運の象徴。戦場で輪虎に幸運が訪れますように…』
『花言葉は約束…だから約束して!必ず帰って来るって…』
葵の言葉、葵の顔が次々に甦った。
「ああ、そうだ…帰らないと…帰るって約束したんだった…葵は信じて待ってくれてるんだった…」
動かない体を無理矢理起こすと這うように歩いて無我夢中で進んだ。
暗闇で方向なんて全く分からない。上へ向かってるのか下へ向かってるのかすら分からなかった。
それでも歩かないと、前へ進まないと…と思いながら必死に歩いた。