第27章 前へ(夢主&輪虎)
その雨から数日後、私の嫌な予感は当たってしまう…
魏国が山陽での戦いに負けたと急報が来た。
正式には和睦らしいが山陽は陥落して秦国のものになったと教えてもらった。
そして一番聞きたくなかった知らせも…
「輪虎将軍が討たれた……」
以前に聞いたことがある。討たれた将は首を切られ敵側に渡ると…
足元から全てが崩れて闇に引きずり込まれる感覚がした。
街でその話を聞いたけどどうやって屋敷に帰ったか覚えてない。
ただただ涙が止めどなく流れていた。
部屋に戻ってからもずっと泣いていた。涙って渇れないんだと初めて知った…
そこからは今が昼なのか夜なのかすら分からなくなってずっと塞ぎこんでいた。
あれだけ泣いて涙は渇れないと思っていたのに涙が出なくなっていた…
いや、涙が出ないのではなく泣き方が分からなくなってしまっていた…
心配した下女や下僕が食事を持ってきてくれたり励ましたりしてくれてたけど返事もまともにできなかった…
そうこうしてるうちに主のいなくなった屋敷からは一人…二人と下女も下僕もみんな辞めていなくなっていた。
ようやく気が付いた…この世界に来る前から…出会う前から輪虎はずっとここにいた。
お互いその存在を知る前から同じ空の下にいた…
この世界に来て私は輪虎のいない世界を知らない…私の全てがなくなったようだった……