第25章 別離①(夢主side)
出陣の朝、私の気持ちとは裏腹に空は雲一つない晴天だった。
「泣いてたのか……?」
輪虎が呟く声がした。頬を手で擦っているようだ。
「ん…おはよう…」
「おはよ…」
それ以上何も言えなかった。
優しく頭を撫でられると輪虎は支度を始めた。
朝食も二人でいつも通り食べたけどほとんど会話はなかった。
時々、他愛のない話をしてくれたけどほとんど聞いてなかった。
何か話すと泣いてしまいそうでこんな悲しい朝は初めてだった…
ホントは今すぐに輪虎の胸に飛び込みたかった…抱き締めて欲しかった…
でも、そんなことするときっと離れられない…迷惑がかかる…そう思って自分の気持ちを抑えるのに必死だった。
朝食を食べ終わったらもう時間だ。
輪虎が立ち上がると甲冑を纏い双剣を腰に差した。
私が渡したお守りは甲冑の裾の裏にそっと括り付けてくれた。
その姿は嫌いじゃない…凛としてていつもよりずっと逞しくて…でも、今日は練兵に行くんじゃない…
外に出て行こうとした瞬間、気持ちが抑えきれなくなって後ろから抱きついていた。
「ごめんなさい…分かってる…でも………」
輪虎が向き直し正面から抱き締められた。今までで一番強い力だったと思う。
「うん…分かってる…分かってるよ……」