第21章 想望①(夢主side)【R18】
また意識を失っていたらしく、気が付くと夜着を着て布団が掛けられていた。でも部屋に輪虎はいない…
不思議に思って庭に出るとそこでは輪虎が双剣を流れるように振っていた。
月明かりに照らされたその姿は綺麗で…それでいてどこか人間離れしたような雰囲気で…
思わず息を飲み、固まって見ていると私に気付いた。
「葵……」
微笑まれたけど、それはどこか悲しそうな笑顔…
剣を仕舞いゆっくり私に近付くと頬を撫でられた。
「剣を振るう僕は怖い?」
その手はいつもと違って冷たい…そんな手を温めたくてそっと手を重ねた。
「正直…あの時は別人かと思うほど雰囲気が違って驚いた。だけど、怖くはないよ。どんな輪虎も私が好きになった輪虎だから…」
私のその言葉にどこか驚いた様な表情をするとそっと抱き締められた。
抱き締められると輪虎の鼓動が聞こえた。それは温かな血の流れる優しい音…
「ホント葵は優しいね。あんな僕を見ても好きでいるなんて…僕がずっと側にいないとダメだね…」
「そうだよ…ずっと側にいてね…」
見つめ合い微笑むとそっとキスされた。頬に添えられたその手はもう温かい…
輪虎……貴方はいつかきっと戦場に行くよね?
殿…廉頗将軍の為に戦場に立ち続けてきた将軍だもんね…
あの将軍としての空気、顔で…
私の生き方は変えられない。どんな状況でもきっと今日みたいになってしまう…
それでも輪虎の全てを受け入れて一緒に歩いて行くよ。
貴方のその手が冷たい時は私が温めるから…ずっと手を握って…
だけどそんな私の想いを裏切るように運命は過酷なものへと変わろうとしていた。
空は嵐を呼びそうな雲の流れだった…