第19章 激情①(夢主side)
三日後、私は輪虎に連れられて練兵場にやって来た。
すでに練兵は始まっていて屈強そうな兵がぶつかり合い、側で檄を飛ばしている兵もいる。
「おはよ~。頑張ってるね~」
そう輪虎が声をかけると檄を飛ばしていた兵が近付いて来た。
「おはようございます!輪虎様。…とそちらは?」
こんな所に私がいることに明らかに驚いてた。
「ああ、この子が例の子だよ。葵、こっちの子は僕の副官。」
そう紹介された兵は輪虎より体格のいいゴツい人だった。
「初めまして。葵です。」
頭を下げると向こうも頭を下げてきた。
「あ、いえ!こちらこそ!」
「あのさ、ちょっとお願いがあるんだ。」
挨拶を交わすと輪虎が兵に話しかけた。
「えっ?はい。何なりと。」
「葵に馬の乗り方を教えて欲しいんだ。」
「は?えっ?葵…殿に…ですか?えっ?」
副官は明らかに戸惑っていた。
(今の時代では女性が馬に乗るのは滅多にないと言ってたからだろうな…)
でも、輪虎は軽やかに続けた。
「うん。この前、基本姿勢は教えたからしっかり乗れるように教えてあげて。牝馬が一頭空いてたよね?」
「えっ?本当に葵殿が乗るんですか?」
「そう。馬に乗れる女の子なんて面白いでしょ?」
ふふ…と笑う輪虎の横でもう一度頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
「あ…はい。分かり…ました。しかし輪虎様、あの牝馬は少々気性が荒いので葵殿には難しいのでは…」
「う~ん…馬は相性だからまぁやってみて。どうしても無理なら考えるから。」
「分かりました!では、葵殿こちらです。」
そう言って案内してくれようとした時だった。
「あ、そうだ!心配しなくていいとは思うけど、葵に変な気起こしたらどうなるか分かってるよね?」
輪虎はニッコリ微笑んでたけど物凄い殺気なのが分かった。
「わ、分かっております!!」
副官は変な汗がいっぱい出てるし、私もまた恥ずかしくて赤くなっていた。
輪虎はそんな私達をクスクス笑いながら見送ると練兵の指揮に向かった。