第16章 恋の歌②(輪虎side)
またからかってしまうと葵は真っ赤になって立ち上がった。
「あはは、分かった。」
笑いながら馬に向かうと素直に後ろをついて来ている。
そうして基本的な乗り方、降り方、乗馬姿勢を教えていった。
なかなか筋は良さそうだけど、どうやら想像以上に怖いらしく必死に手綱にしがみついている。
「 葵、手綱は命綱じゃないんだからもっと背を伸ばして。葵が怖がってたら馬も怖がって言う事聞いてくれないよ。」
そう指導してもなかなか実践は難しいようだ。
「分かった…う~…でもやっぱり怖いよ……」
「ははっ、これは特訓が必要だね。」
それから日が傾き始めるまで基本練習を繰り返し何とか基本的な乗馬姿勢だけは出来るようになっていた。
「うん。とりあえず今日はここまで。後は明日以降しっかり練習していこうね。」
「ありがとう!でも、忙しいのに私の練習まで大丈夫なの?」
最近の忙しさのせいか少し不安そうだ。
「うん。まぁ、全部僕が教えてあげるのは無理だからちゃんと先生つけてあげる。」
ニッコリ笑ってそう言うと安心してくれたようでそのまま葵の後ろに跨がった。
「よし、じゃあ帰るよ。」
今度は手綱を二人で持って走り出した。
重ねた手が温かい…それだけで嬉しい…そんな愛しい時間……