第5章 濃い恋中。
「‥‥い‥‥‥おい‥‥」
「‥‥?」
すぐ近くで爆豪さんの声がする。
‥‥あったかい。
温かくて、また目を閉じそうになる。
「おい。寝んな」
「っ!? いっでででででで」
耳を引っ張られる。痛い痛い!
何事だと体を起こすと、ザプンと水飛沫がたった。
‥‥‥え?
「いきなり起きんな。頭痛くなんぞ」
「‥‥‥え? ‥‥え?」
振り向くと、霞がかった視界の先で爆豪さんが真顔で座っていた。
状況が飲み込めない。え? どういうこと?
「そろそろ理解しろや。マヌケ」
「‥‥‥え?」
待って。待って待ってちょっと待って。
なにその格好‥‥なんで‥‥上着てないの?
え、ちょっと、私も上着てない。っていうか、‥‥下も、着て‥‥‥
「────っいやぁぁ────ッ!?」
「風呂場は響くから叫ぶんじゃねぇッ」
気がついた瞬間、口を塞がれる。
すぐ目の前に迫ったその顔に血圧が急上昇する。
静まっていく水飛沫。髪を流れる水滴。体を滑る汗。
やばい。
頭が溶けそうになるのを、理性で保つ。
爆豪さんは、グッと体を近づけてきた。
その逞しい身体に、目がグルグルしそうになる。
「‥‥落ち着いたら、こっち来い」
元の姿勢に戻った彼の顔を直視できない。というか、どうしてこうなったの? お風呂に来たまでの記憶がない。
「わ、私、何でここに‥‥」
「‥‥‥あ?」
「っ!?」
めっちゃ睨んでる‥‥
そんな顔されても、私が訊きたいくらいなんだけどな‥‥
「‥‥覚えてないんか」
「え?」
「‥‥‥チッ‥‥」
「え、ちょ、うわっ」
腕を引かれて彼の腕の中へ。
熱い、厚いその肌に触れた瞬間、溢れそうなほど鼓動が大きくなる。
ダメ、止まりそう。心臓、鳴りすぎて止まりそう。
「離、して‥‥」
「生殺ししてんのはお前だかんな」
「‥‥‥」
寂しそうな声。
胸板に耳を押し当てる。
どうしても、鼓動が聞きたくて。私ばっかりドキドキしてるの、悔しい。
でも、どれだけ目を閉じて、研ぎ澄まして聞いてみても、規則的なトクトクしか聞こえない。
‥‥悔しい。
私ばっかり、ドキドキさせられてる。
「‥‥生殺しじゃなかったら」
腰に手を回す。
その瞬間、爆豪さんの心臓がドクンと大きく脈打った。
「生殺しじゃなかったら、いいの?」